労働時間法制改悪に断固反対する集会アピール

 

1.本日、大阪近郊の法律家、労働組合、貧困問題・社会保障問題に取り組む諸団体が、立場・分野の違いを超え、すべての労働者の健康の確保とワーク・ライフ・バランスの実現のために、政府が提案している労働時間法制の改悪に反対するとの一致点で結集した。政府は、この集会に現れた声を真摯に受け止めるべきである。

 

2.安倍内閣は、本年4月3日、「労働基準法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、今国会に提出した(以下「本法案」という。)。

  本法案には、いわゆる「高度プロフェッショナル制度」と呼ばれる新しい制度の創設が盛り込まれている。政府はこれを「時間ではなく成果で賃金が決まる制度」などと宣伝しているが、明らかな虚偽である。

この制度は、一定の要件さえ満たせば、労基法に定められた労働時間に関するあらゆる規制が適用されず、使用者は労働者に対して休憩や休日を与える義務や時間外労働・休日・深夜労働に対する割増賃金を支払う義務をすべて免れる、という制度である。言い換えれば、使用者は労働者に対して定額の賃金さえ支払えば、どれほど長時間でも、深夜でも早朝でも、休憩すら与えず、労働者を好き放題に使うことができるという、使用者にとっては夢のように都合の良い制度であり、「定額働かせホーダイ」と呼ぶべき制度なのである。

  私たちは、決して、このような制度の創設を容認することはできない。

 

3.また、本法案には、「定額働かせホーダイ」制度のほかにも、既存の制度である裁量労働制やフレックスタイム制について、その適用範囲を拡大したり、適用の際の手続をこれまでより簡素化しようとする内容が盛り込まれている。

  しかしながら、裁量労働制やフレックスタイム制度のもとでも、仕事の量や期限を決めているのはあくまで使用者である。

  このため、形式上はこれらの制度が導入されていても、使用者から過大な業務を命じられた労働者が、出退勤の時刻を自己決定することが事実上不可能となっているケースや、長時間過重労働を繰り返すといったケースが現実に存在しており、大きな問題となっている。

  したがって、私たちは、裁量労働制やフレックスタイム制度についても、安易な適用範囲の拡大や手続の簡略化には断固反対するものである。

 

4.日本では、違法な長時間労働や不払い残業(サービス残業)が横行している。長時間労働の末に脳・心臓疾患や精神疾患を発症する労働者の数は依然として多数に上っており、労災請求・認定数の水準も高いままである。

  このような中、「過労死等防止対策推進法」が昨年11月から施行された。同法は、「近年、我が国において過労死等が多発し大きな社会問題となっていること及び過労死等が、本人はもとより、その遺族又は家族のみならず社会にとっても大きな損失であることに鑑み、(中略)過労死等の防止のための対策を推進し、もって過労死等がなく、仕事と生活を調和させ、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に寄与することを目的として」(同法1条)、成立した法律である。

  そもそも労働時間規制は、労働者の健康を保護する目的のみならず、人間らしい生活の保障というより高位の理念のもとに位置づけられるべきものである。すなわち、全ての労働者は「健康で文化的な」生活を営む権利を有し(憲法25条)、「人たるに値する生活」(労基法1条)を享受する権利を有しているが、これらは単に具体的・精神的疲労が一定範囲内にとどまっている状態ではなく、労働者が十分な私的時間を確保し、家族的生活や社会的・文化的な生活を享受できる状態を意味している。両性が平等な立場で労働・社会的生活に参加し、かつ、家族的責任を分担しうるためにも、労働時間の規制は不可欠なのである。(注【西谷敏「労働法第2版」282~283頁参照】

 

5.本集会参加者は、政府に対して、「定額働かせホーダイ」制度を含む本法案を撤回するよう求めるとともに、全ての労働者の健康の確保とワーク・ライフ・バランスの実現に資する労働法制の実現のため、今後とも協力・協同して奮闘する決意をここに表明する。

 

2015年5月21日

 

在阪法律家8団体による緊急大集会参加者一同