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2015年7月2日

 

大阪労働者弁護団 代表幹事 丹羽雅雄

 

大阪市廃止住民投票の勝利を踏まえ真の地方自治の実現をめざして

 

 2015年5月17日実施された大阪市廃止・特別区設置住民投票において反対票が賛成票を上回り、いわゆる「都構想」は否決された。反対70万5585票、賛成69万4844票という僅差であったが、多くの人々が立ち上がり、創意工夫をこらした活発な活動に取り組んだ成果であり、歴史的な勝利である。大阪労働者弁護団も全力をあげて反対運動に参加した。

 橋下徹市長は就任以来、職員に対するアンケート調査の強制、組合事務所退去、チェックオフ打ち切り、労使関係条例など労働者と労働組合に対する不当な攻撃を続け、また、市民サービスを切捨ててきた。いわゆる「都構想」は、その延長にあり、労働者と市民の生活と権利を破壊する策動であった。

 橋下市長と大阪維新の会は、「改革」の幻想を大々的に振りまいたが、その内実は、政令指定都市大阪市を廃止し権限と財源を大阪府に取り上げるもので、何のメリットもなく、市民サービスの悪化をもたらすものでしかなかった。また大阪市会で一旦否決されたにもかかわらず、議論を封殺し強引に住民投票実施に持ち込んだもので、手続の上でも民主主義の原則に反するものであった。

 今、住民投票に至る経緯そしてその結果を振り返ってみれば、橋下市長・大阪維新の会が提起したものは、大阪において真の地方自治を実現するというものとは無縁の、橋下市長という一政治家の名誉欲・権力欲を実現するための策略に過ぎなかったことが明らかである。橋下市長は、「大阪都」が実現しなければ大阪の未来はなく破綻あるのみとひたすら強調した。しかし住民投票で破れるや、同氏は現職の市長でありながら、直ちに「政治の舞台から引退する」と公言し、「潔い決断」を演出した。しかしその後も橋下市長は安倍首相と会談する等「政治家」としてのパーフォーマンスを続けている。無責任極まりない。この経過を見ても、橋下市長が「政治的野望」のために「大阪都構想」を打ち上げ、大阪府民・大阪市民を大混乱に陥れたものというほかなく、その責任は重大である。

 昨今の日本の憂うべき政治状況は、橋下市長に象徴されるように、本来あるべき熟議に基づいた民主主義ではなく、派手で空虚な雰囲気のみに基づいて、民にとって極めて重要な問題が危険な方向に推し進められようとする傾向である。

 私たちは、今回の住民投票をひとつの契機として、あるべき地方自治とは何か、そこにおいて真の民主主義をいかに実現するか、を改めて考え直し、再び“橋下市政”の如きが跋扈しないよう、あらゆる分野、階層の人たちが手を携えて取り組んでいくべきと考える。

                                                                              以上

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