■労働相談Q&A 2-2頁
(使用上のご注意)
この労働相談Q&Aは、大阪労働者弁護団が2014年7月に発行した『働くあなたを応援する!本』(『応援本』)を元に、労働者が日々の生活の中で直面するであろう問題をコンパクトにまとめたものです。
詳細については『応援本』参照頁をご覧ください。
また、現実の具体的な相談案件の場合にどのようになるかについては、弁護士にご相談されることをお勧めします。(相談の詳細はこちら→ 法律相談・ホットライン)
※更新履歴:Q1~4=2015年6月2日(Q1~16まではQ&A1頁に掲載しています)
Q5~8=2015年8月1日
Q9~12=2015年10月5日
Q13~16=2015年12月2日
Q17~20=2016年2月1日(ここからこの頁です)
Q21~24=2016年4月5日
Q25~27=2016年7月13日
Q2 給料や仕事内容が事前の話と違ったら?…3
Q3 最低賃金ってなに?…6
Q4 契約社員の給料は正社員の半分でも仕方ない?…7
Q6 どんなときに残業代をもらえるの?…10
Q7 年休をとるには会社の許可が必要?…12
Q8 社会保険に加入するのは権利? 義務?…14
Q9 妊娠したら辞めないといけないの? … 17
Q10 子育てをしながら働くには? … 19
Q11 介護のために休めるって本当? … 21
Q12 「来月から給料を下げる」と言われたら? … 23
Q13 配転を命じられたら従わないとダメ? … 24
Q14 仕事でケガをしたり病気になったら? … 26
Q15 職場での男女差別ってどんなこと? … 28
Q16 セクハラにあってしまったら? … 30
Q17 パワハラにあってしまったら? … 32
Q18 懲戒処分って何? … 34
Q19 ミスをして雇い主に損害を与えたら?… 36
Q20 「明日から来なくていい」と言われたら?… 38
Q22 辞めさせてくれない場合はどうしたらいいの?…42
Q23 内定を取り消されたら?…44
Q25 会社がつぶれた! 未払給料はどうなる?…46
Q26 派遣ってどんな働き方?…48(近日アップ予定)
Q27 問題発生! どうしたらいい?…51
※労基法=労働基準法 労契法=労働契約法
※目次の数字は『応援本』の掲載頁です。
Q17 パワハラにあってしまったら?
A17-1 パワハラとは職場での「いじめ」です。
多くの職場で、上司が部下に対して「仕事上の教育や指導」として暴言をあびせかけたり、集団で一人をターゲットにして無視するといった「いじめ」の例が増えています。
これは、みなさんの「名誉」や「人格権」を傷つける「嫌がらせ」であり、最近は「パワーハラスメント」(パワハラ)と呼ばれています。
A17-2 色々な形の嫌がらせがあります。
パワハラにはさまざまなものがありますが、典型的なものとしては次の6つです。
①暴行・傷害(身体的な攻撃)
②脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言等(精神的な攻撃)
③仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
④仕事に必要ないことや、できるはずがないことをやらせたり、仕事を妨害すること
⑤仕事をさせないことや、簡単すぎる仕事しか与えないこと
⑥プライベートに立ち入りすぎること
上司から部下に対してだけでなく、部下から上司、同僚同士でもパワハラはありえます。
A17-3 ガマンする必要はありません。
「これってパワハラかも」と思ったら、できるだけ早く、労働組合や労働事件に詳しい弁護士、まわりの人たちに相談しましょう。
まず、嫌がらせをしている人(加害者)には、すぐに嫌がらせをやめるよう言いましょう。
また、パワハラがあるときには、雇い主にもそれをとめる義務がありますから、雇い主にも被害を報告し、パワハラをとめるよう求めましょう。
一人でたたかえないときには、労働組合に入って会社と団体交渉をするのがよいでしょう。弁護士に依頼することもできます。
「パワハラ被害にあった」ことを雇い主にわからせるために、いつ何があったか、録音やメモなどで、できるだけ記録に残してください。
A17-4 あなたは悪くありません。
自分を責めないでください。どんな理由をつけようともパワハラは許されません。
悪いのは、加害者とそれを見逃している雇い主です。
「自分が悪いわけじゃない」ことを知ってください。
(詳細は『応援本』32頁~33頁参照)
Q18 懲戒処分って何?
A18 労働者が受けるペナルティですが、雇い主は好き勝手に懲戒処分することはできません。
1 職場のルール違反に対するペナルティ
懲戒処分は、職場の秩序やルールに違反したという理由で労働者が受けるペナルティです。しかし、雇い主は好き勝手に懲戒処分をできるわけではありません。
2 懲戒処分の種類
懲戒処分にはいろいろなものがあり、就業規則などに定められています。
たとえば、軽いものからいうと、戒告、厳重注意、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇などがありえます。このうち給料を減額する「減給」は、1回の減額が平均賃金の1日分の半額をこえてはなりませんし、1か月の減給の総額がその月の給料の10%をこえてはならないことになっています(労基法91条)。
3 懲戒処分をするときのルール
(1) 就業規則での決まりが必要
就業規則に、懲戒処分の理由や種類について決められていなければ、懲戒処分は無効となります(労基法89条1項9号)。まず、就業規則を確認しましょう。
(2) 懲戒の理由に該当することが必要
懲戒処分を受けたときは、その理由を雇い主に聞きましょう。
雇い主がいう懲戒の理由が事実と異なっていたり、正当な事情がある場合には、懲戒はできません。後になって、雇い主が懲戒の理由をつけ加えてくることもあるので、懲戒理由を書いた書面をもらうようにしましょう。
(3) 懲戒処分が許されない場合
例えば、同じことについてすでに懲戒処分を受けていた場合、他の社員と同じことをしたのに、自分だけ懲戒処分を受けた場合、自分がしたことに比べてあまりにも重い懲戒処分を受けた場合、労働組合に入ったことを理由に懲戒処分を受けた場合などは、懲戒処分をすることは許されません(労契法15条参照)。
(4) 言い分を聴く機会が必要
雇い主が懲戒処分をするには、本人の言い分を聴く機会を設けなければなりません。懲戒処分を受けても、簡単に受け入れず、弁護士や労働組合に相談してください。
4 懲戒解雇と退職金
懲戒解雇だから退職金は払わない、と言われることもありますが、退職金が払われるか否かについては、これまでの会社への貢献を台無しにしてしまうほどの悪いことをしたのかどうかが問題になります。そこまででなければ、退職金は払ってもらえる可能性があります。懲戒解雇だとしても、退職金は払ってもらえる可能性があります。
(詳細は『応援本』34頁~35頁参照)
Q19 ミスをして雇い主に損害を与えたら?
A19-1 ミスをしても損害賠償しなくてよいのが原則
どんなにまじめに働いていても、人間である以上ミスは避けられません。どんな小さなミスでも「弁償しろ」と言われてしまうと、たいへんなことになってしまいます。
雇い主は、ある程度のミスがあることは予想できますし、みなさんの働きで利益を得ていますから、想定の範囲内のミスはビジネスのリスクに入れておくべきです。
つまり、通常求められる注意を払っても起こってしまうようなミスによって発生する損害は、雇い主が負担することになります。
逆に、会社のお金を横領したといった単なるミスとはいえない場合には、損害を与えた労働者は弁償しなくてはなりません。
A19-2 たとえば交通事故を起こしてしまったとき
交通事故を起こして会社の車を傷つけたり、トラックの積荷を壊した場合、雇い主から「弁償しろ」と言われるかもしれません。
しかし、普通に注意していても交通事故は起こりうるものですから、雇い主はこうした事態に備えておくのが通常です。したがって、普通に注意している限り、労働者は「損害賠償」をする必要はありません。
A19-3 前もって違約金などを決めておくことはできない。
職場の規則で「交通事故を起こしたら○万円を支払う」などの記載はありませんか? しかし、違約金や損害賠償額を決めておくことは法律で禁止されています(労基法16条)。
仕事でミスをして雇い主に損害を与えたときに損害賠償をしなくてはいけないかどうかは、注意をしても起こってしまうものかどうかで決まり、このような規則があっても同様です。
(詳細は『応援本』36頁~37頁参照)
Q20 「明日から来なくていい」と言われたら?
A20-1 理由を確かめましょう。
まずは、退職勧奨なのか、解雇なのか、確認しましょう。
退職勧奨であれば、応じる必要は全くありません。辞めるつもりがなければ、そのことをはっきりと伝えましょう。しつこく退職を迫るようであれば、上司の行為は違法となることがあります。解雇だと言われたら、解雇の理由を紙に書いてもらってください。可能であれば、その時の会話を録音するとよいでしょう。
そして、できるだけ早く、労働組合や弁護士に相談しましょう。
A20-2 雇い主は自由に解雇できない。
法律や裁判例によって、労働者を解雇することは厳しく制限されています。解雇の理由に納得できなければ、解雇が無効であることを裁判所に訴えて、あなたが雇い主に雇用される労働者であることの確認や、給料の支払いを求めることができます。
(1)法律で明確に禁止されている解雇
産前産後の期間中の解雇や、労働基準監督署等への申告を理由とする解雇、労働者が仕事上の病気やケガ(労災)で休んでいる期間・その後30日間に解雇することなどは、法律で禁止されており無効です。
(2)客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当でない解雇は無効
法律で明確に禁止されていなくても、解雇は簡単にはできません。解雇するほどのもっともな理由がなく、誰がみても解雇が仕方ないといえない場合、その解雇は無効となります(労契法16条)。
A20-3 解雇予告手当を受け取ろう。
雇い主は、労働者を解雇する場合、少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う義務があります。もし解雇を受け入れる場合でも、30日以内の解雇であれば、解雇予告手当を請求しましょう。
(詳細は『応援本』38頁~39頁参照)
Q21 契約期間が終了したらもう働けない?
A21 「契約更新はしない」などと言われても、簡単にあきらめないでください。
有期雇用の契約期間が終わったことを理由に会社が労働契約を終了させることを「雇止め」とか「契約更新拒否」といいます。
何度も契約が更新され、今後も引き続き契約更新されるだろうと思って働いてきた労働者が突然雇止めされてしまうと、生活に困ってしまいます。
そこで法律上、①過去に何度も契約の更新がされていて、雇止めが無期雇用の人に対する解雇と同じといえる場合、または、②会社から「有期は形式的なもので、どの有期の人も長く働いてもらっている」との説明があったケースなど、契約が更新されると期待するのがもっともだといえる状況がある場合には、簡単に雇止めすることはできません。
「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でないと認められない」とき、つまり雇止めするもっともな理由がなく、誰がみても仕方ないとはいえないときには、雇止めは認められず、引き続き同じ労働条件で働くことができます(労契法19条1号、2号)。
「契約更新はしない」「雇止めだ」と言われても、簡単にあきらめないでください。
また、有期雇用の労働契約が更新されて合わせて5年を超えた場合、労働者が申込みをすれば、無期雇用になります(労契法18条1項)。5年たてば、無期雇用にするよう会社に申し込みましょう。
(詳細は『応援本』40頁~41頁参照)
Q22 辞めさせてくれない場合はどうしたらいいの?
A22-1 すぐに辞められることもある。
仕事を辞めることを「労働契約の解除」といいます。
労働条件が事前に伝えられていた条件と違っていたら、すぐに労働契約を解除することができます(労基法15条2項)。
A22-2 契約期間がない場合は「辞めたい」と伝えれば辞めることができる。
期間の定めのない労働契約では、「辞めます」と雇い主に伝えて2週間が経過すると、雇い主との労働契約は終了します(民法627条1項)。つまり、契約を終わらせたい日の2週間以上前に「辞めます」と伝えれば、雇い主が「辞めさせない」と言っても、辞めることができるのです。有給休暇が残っていれば、2週間の間に積極的に使いましょう。
職場によっては、たとえば「退職は3か月前に申し出なければならない」と決めていることがありますが、そのような定めは労働者に不利なので認められません。
2週間出勤するのがしんどいような状況でしたら、出勤しないこととその理由(体調不良など)を雇い主に伝えておきましょう。無断欠勤は禁物です。
ただし、もしパワハラやセクハラなどの被害を受けていてとても出勤できる状態ではない時には、雇い主に落ち度があるといえるため、すぐに労働契約を解除することもできます。
A22-3 契約期間がある場合は「やむを得ない理由」が必要
契約期間がある場合は、その途中でも「やむを得ない理由」があれば、たとえ雇い主が反対しても辞めることができます(民法628条)。
たとえば、契約期間が1年間と決められていて数か月しか働いていなくても、体を壊すような長時間労働が続いていたり、セクハラやいじめにあっている時には「やむを得ない理由」があるといえるでしょう。
A22-4 罰金や違約金を払う必要はない。
「罰金を支払わないと辞めさせない」などと言ってくる雇い主がいます。しかし、雇い主からどのように言われても、「辞めます」と伝えてから2週間が経過すれば、辞めることができます。罰金を払うという規則があったとしても、払う必要はありません。このような規則は法律で許されません(労基法16条)。雇い主がしつこく罰金を要求してくるようであれば、労働組合や弁護士に相談しましょう。
A22-5 離職票を渡してもらう。
労働者が退職したら、雇い主はハローワークにその労働者が雇用保険被保険者資格を喪失したことの届出をして、離職票(リショクヒョウ)を労働者に渡すことになっています。
次の仕事が見つかるまでの間、雇用保険の「失業手当」(基本手当といいます)をもらうためには、離職票が必要です。
雇い主が離職票を渡してくれない場合、渡すようにいいましょう。それでも渡してくれなければハローワークに言って、ハローワークから雇い主に連絡してもらいましょう。
(詳細は『応援本』42頁~43頁参照)
Q23 内定を取り消されたら?
A23-1 簡単にあきらめない。
採用内定通知を受け、就職活動をやめたところ、入社直前に採用担当者から「採用は見送ります」と言われたら、次の就職先を探すしかないのでしょうか?
内定通知を受けて誓約書を提出するなどしていたら、実際に働く前であっても、あなたと雇い主の間には労働契約が成立します。いったん労働契約が成立した以上、雇い主は簡単に労働契約をなかったことにすることはできません。
採用内定を取り消すことができるのは、予定の時期に学校を卒業できなかったとか、重要な採用手続きを理由もなくやらなかったなど、誰が見ても仕方ないなと思う理由があるときに限ります。
また、「会社の業績悪化」が理由とされた場合であっても、経営困難を理由とする「整理解雇」と同じように、内定を取り消さないほどの業績悪化があったかなどの事情を慎重に検討しなければなりません。
A23-2 納得できなかったらたたかおう。
内定取消に納得できない場合には、解雇の場合と同じように、従業員であることの確認や給料の支払いを、雇い主に対して請求することができます。もう働きたくないという場合には、内定取消によってうけた損害の賠償を請求することも考えられます。
(詳細は『応援本』44頁)
Q24 退職金は必ずもらえるの?
A24-1 退職金制度があるか調べましょう。
会社に退職金の制度がない場合には、退職金はもらえません。会社の人事総務担当者に聞いたり、就業規則(退職金規程)を確認して調べてみましょう。契約社員やパートタイム労働者にも退職金の制度が定められている場合があります。会社が就業規則を見せてくれない場合は、労働基準監督署、労働組合などに相談しましょう。
A24-2 金額は退職金規程に基づいて計算されます。
退職金の金額は、就業規則(退職金規程)などで決められたルールや計算式に基づいて計算されます。退職した日の給料、勤務期間、退職の理由などに応じて計算されることが多いようです。就業規則などを調べて、計算が本当に正しいかどうかよく確認しましょう。なお、懲戒解雇された場合もあきらめる必要はありません。
A24-3 勝手に退職金制度を廃止できない。
退職金を支払っていた会社が、就業規則を変更して「退職金制度をやめた」「退職金を支払わないことにした」とすることは、簡単にはできません。きちんとルールにしたがって、就業規則の変更がなされているかをよく確認しましょう。
(詳細は『応援本』45頁参照)
Q25 会社がつぶれた!未払給料はどうなる?
A25 立替払いをしてもらえることがあります。
まだもらっていない給料があるのに、会社がつぶれて社長も行方をくらましてしまったようなとき、近くの労働基準監督署に「会社が倒産して給料を払ってもらえないので、立替払いの制度を使いたい」と申し出てください。
会社に代わって「労働者健康福祉機構」というところから立替払いをしてもらえることがあります。
申出期間に制限がありますから、できるだけ早く申し出てください。
もし会社が「破産」という裁判所の正式な手続きをとっているときは、「破産管財人」から連絡がきますので、破産管財人に、この立替払いの制度を使いたいことを伝えましょう。
ただし、立替払いの制度で支払ってもらえるのは退職前6か月以内のものに限られ、さらに、立替払いをしてもらえる金額にも限度があります。
会社が破産手続をとっているとき、もしも会社に財産が残っていれば、破産手続開始前3か月間の給料は最優先で支払ってもらえます。
その場合、いつからいつまでの給料が未払いになっているのか、金額はいくらかなどを申し出る「債権届出」という手続きをすることになります。
未払給料の金額を証明することができるよう、給与明細、タイムカード、就業規則、賃金規定、雇用契約書などの書類をもらって保管しておきましょう。これは会社の倒産のときだけでなく、残業代を請求するときにも役に立ちますし、万が一解雇されたようなときにも必要な書類です。
(詳細は『応援本』46頁~47頁参照)
Q26 派遣ってどんな働き方?
A26-1 派遣は雇い主と働くところが別
派遣労働とは、A社に雇われている労働者が、A社からB社に派遣されてB社で働くことをいいます。A社を派遣元、B社を派遣先と呼びます。給料はA社から受け取りますが、仕事の指示はB社から受けます。
A26-2 デメリットを十分に考えよう
派遣労働で働く場合、派遣で働く場合のデメリットを十分に考えておく必要があります。
まず、派遣労働は不安定です。派遣期間中でもB社がA社との派遣契約を解除したり、他の人を派遣するように要求したことを理由に、A社が派遣社員を解雇したり雇止めすることはよくあります。そんなことでは、将来の見通しが立てられませんし、収入が安定しないので、とても困ります。
また、派遣労働では労働者とB社との間に直接の労働契約関係がありません。そこで、何か問題が起きたとき、実際に働いているのはB社なのに、B社が責任をとってくれるとは限りません。
派遣なら働く曜日や時間を自由に決められるという点も、実際のところは大いに疑問です。そもそも時給自体低くおさえられていることがほとんどですから、生活できるだけの給料をかせぐためには働く曜日や時間を選んでいる余裕などないのです。
A26-3 派遣社員も労働法で守られている
そうはいっても、派遣で働かざるを得ないこともあるでしょう。派遣社員も労働者であることに変わりはありませんから、もちろん保護されます。
まず、このQ&Aでも紹介している、労働時間や時間外賃金や年次有給休暇などの労働者の権利は、派遣社員にも保障されています。
派遣社員がB社の従業員からのいじめが原因で「うつ病」を発症してしまったとします。この場合、A社が加入する労災保険の申請(Q14参照)をすることができますし、B社とその従業員に対して損害賠償請求をすることもできます。
派遣では業種によって派遣が可能な期間が決まっていることがあります。B社がある派遣社員をその期間が過ぎても働き続けさせたい場合や、B社で3年を超えて同じ仕事をしていたのにB社が別の人を新規採用しようとする場合、B社はその派遣社員に直接労働契約を結ぶ努力義務があります。(労働者派遣法40条の4、40条の5)。また、違法派遣があったときにはB社は派遣社員に対して労働契約の申込みをしたものとみなされることがあります(労働者派遣法40条の6)。その場合、派遣社員が承諾すればB社に直接雇われることになります。ここでいう違法派遣とは、たとえば派遣が禁止されている業務(港湾運送業務、建設業務、警備業務)を派遣社員にさせたり、派遣可能期間を超えて派遣社員を入れたり、派遣元以外から派遣を受けた場合などです。
さらに、もし派遣切りされてしまった場合でも簡単にあきらめないでください。合理的な理由がない派遣切り(解雇や雇止め)は無効となる可能性があります。B社に対して直接、B社の従業員であることを請求できる場合もあります(「5」を見てください)。
A26-4 派遣可能期間について
従前、いわゆる専門26業務といわれる業務以外の業務については原則1年、職場の過半数労働者の意見を聞いてあらかじめ決めた場合でも最長3年しか派遣労働者を受け入れることができないことになっていました。
しかしながら、2015年に労働者派遣法の改定案が成立し、企業は、職場の過半数労働者代表の意見を聞けば(同意は不要)、業務の種類に関係なく、実質上いつまででも派遣労働者を受け入れることが可能という制度に変わってしまいました。この法改定によって、不安定で低賃金の労働者派遣が今以上に広がり、労働者の生活が守られない社会になってしまうことが危惧されます。
A26-5 派遣先との直接の労働契約を主張できる場合もある
そもそも労働契約が成立しているかどうかは、契約の名前がどうなっているかという形式ではなく実態から判断します(Q1参照)。
ですから、形式としてはA社からB社に派遣されていても、実際には派遣先であるB社がその労働者の給料やその他の労働条件を決めて給料を支払っているような場合には、その労働者とB社との間に直接の労働契約関係が認められる場合もあります。これを「B社との間に黙示の労働契約が成立している」ということもあります。
自分は派遣社員だけど、実際には派遣元はペーパーカンパニーで、給料とか労働時間とかいろいろ決めているのは派遣先というあなた、労働組合や弁護士に一度相談してみてください。
(詳細は『応援本』48頁~50頁参照)
Q27 問題発生! どうしたらいい?
A27-1 まずは相談しよう。
仕事をするについて、いろいろな権利が保障されていることがわかってもらえましたね。
しかし、法律で保障された労働者の権利は必ずしも守られておらず、いろいろな問題に直面すると思います。
そんなとき、一人で悩まないで、早めに誰かに相談しましょう。
誰に相談するかですが、労働者の権利についての知識を持っている労働問題の専門家である労働組合、労働者側弁護士(労働問題に労働者側の立場で取り組んでいる弁護士)などに相談されることをおすすめします。それ以外にも、労働局や総合労働事務所など、国や自治体の窓口に相談することもできます。
A27-2 いろいろな解決手段がある。
相談の結果、法律で保障された権利を主張できることがわかった場合、会社に対して要求する手段としては、
①会社と交渉する
②労働基準監督署から指導してもらう
③労働局や総合労働事務所(労働委員会)のあっせんを利用する
④裁判所を利用する
などが考えられます。
A27-3 労働組合に相談してみよう。
自分一人で会社と交渉するのは心配だという人もいるでしょう。
そんなときに頼りになるのが「労働組合」です。自分の会社に労働組合がないか確認してみてください。もし会社にない、または今一つしっくりこない場合でも、「ユニオン」や「コミュニティユニオン」といった組合に加入し交渉することもできます。また、同僚と労働組合を作ることも可能です。
A27-4 労働者側弁護士に相談しよう。
労働組合を通じて会社と交渉してもらちがあかないということもときにはあります。
そんなとき、労働者側の立場で労働事件に取り組んでいる弁護士に相談してください。弁護士は法律の専門家です。弁護士は会社と交渉したり、交渉での解決ができない場合には労働審判や裁判などの手段での解決を検討し、あなたに代わって手続きを行います。
A27-5 大阪労働者弁護団に聞いてください。
労働組合や労働者側弁護士に相談したいけれど、どうすればよいのかわからないという人は、大阪労働者弁護団に電話してください。あなたの悩みをお聞きする弁護士、労働組合を紹介します。(法律相談の頁 電話06-6364-8620 平日午後1時から午後6時)
A27-6 国や自治体にも相談窓口はある。
国や地方自治体も、労働者の職場でのトラブル解決のための制度を設けています。
労働局や都道府県の総合労働事務所に相談窓口があります。
(詳細は『応援本』51頁~53頁参照)